あなたはリスクリバーサルという言葉を知っていますか?リスクリバーサルはマーケティングの言葉で、多くの場合、「返金保証」のことを指して使われる言葉です。しかし、返金保証だけがリスクリバーサルの本来の意味ではありません。今回は、リスクリバーサルの本来の意味、本質を解説していきます。
「返金保証」だけがリスクリバーサルじゃない
マーケティングやセールスにおいて、リスクリバーサルというと、「返金保証」を1番に思い浮かべる人がほとんどです。しかし、リスクリバーサルの本来の意味は、「返金保証」ではありません。マーケティングにおけるリスクリバーサルの本来の意味は、「買い手側(お客さん)の負うリスクを売り手側が引き受けること」です。
「返金保証」によって解消されるリスクは「経済的・金銭的なリスク」にすぎません。もちろん、商品、サービスの性質によってリスクの種類は異なりますが、「経済的・金銭的なリスク」以外にも、買い手側が負うリスクは存在します。
例えば、あなたが体の不調を訴え、病院で診察を受けたとします。その時に、心臓に重大な疾患が見つかり、手術が必要だと言われたとします。手術を担当することになった医師がこんな風に言ってきたらどうでしょう。
「あなたのオペを担当することになりました。あなたの容態は深刻で、たとえ手術をしても、必ず成功するとは限りません。しかし、安心してください。手術費用は成功した場合にのみお支払いいただければけっこうです。これで手術に対するリスクはないですよね?」
あなたがどんなに温厚で優しい人でも、「いや、待て、ふざけるな!」って叫んでしまうはずです。「心臓の手術に失敗したら、全額返金保証」これでは、なんのリスクリバーサルにもなりません。このように、「返金保証」だけでは、リスクリバーサルは不十分ということになるのです。
レストラン・飲食店の場合
では、どのようなリスクリバーサルをすればお客さんのリスクを引き受けることができるのでしょうか?ここで、「飲食店・レストラン」を例に挙げて説明していきます。飲食店やレストランで多いのが、「美味しくなければ全額返金します」というリスクリバーサルです。しかし、これでは「経済的・金銭的なリスク」しか背負っていません。
飲食店やレストランで食事をする場合、経済的なリスク以外にも、次のリスクを背負うことになります。まずは、せっかく食べに行ったのに、美味しくなくて、時間を無駄にしてしまった、という「時間のリスク」。
そして、飲食店で食事をするのは、食べて空腹を満たす以外にも、「食事を楽しみ」に行くはずです。それなのに、食事が美味しくなかったり、店の雰囲気が気に入らなければ、気分も悪くなり、人生を損した気分になりますよね。そのような「お客さんの人生におけるリスク」も存在します。
では、「お金のリスク」も含め、飲食店でお客さんが背負うことになるリスクをどうやって店側が背負えばいいのでしょうか?具体的なリスクリバーサルを説明していきます。
お金のリスク
まずは、「お金のリスク」です。これは簡単で、「美味しくなければ全額返金」のリスクリバーサルで問題ありません。さきほどの病院の例と違い、飲食店の場合は、経済的なリスクを取り払うだけでも、お客さんの商品、サービス購入への心理的ハードルを大きく下げることができます。
時間のリスク
次に、「時間のリスク」を取り払う方法です。これについては、例えば、「最初に出てきた料理を食べてみて、美味しくなければそれ以降の料理もすべてキャンセル可能」という感じです。最初の料理を食べてみて、すぐに店を出ることができるなら、お客さんが背負う「時間のリスク」は最小限に抑えることができますよね。
人間にとって、時間というのはお金と同じか、それ以上に重要な価値を持っています。自分の商品・サービスでお客さんが時間を損するリスクがないかも徹底的に洗い出してみましょう。
人生におけるリスク
最後に、人生におけるリスクです。少し「時間のリスク」に似ている部分があるかもしれませんね。飲食店の場合なら、「もし、お店やメニューを実際に見て、少しでも気に入らなければ、すぐに他の人気店に連絡して、待ち時間なしでそちらの店にご案内できるように手配します」というリスクリバーサルになります。万一、行ったお店が気に入らなくても、そのまま嫌な気分で帰宅するのではなく、他のお店で食事を楽しむことができる、ということです。
このリスクリバーサルの場合は、飲食店の例のように、他のお店・商品・サービスを良い条件で紹介することになると思います。飲食店以外で例えばホテルや旅館の場合でも、「部屋が気に入らなければ全額返金し、無料でキャンセルできます」よりも、「他のお部屋を見ていただいて、気に入ったお部屋に宿泊していただけます」の方がお客さんのリスクを背負うことになりますよね。
まとめ
このように、私たちは商品やサービスを購入する場合、「お金」以外にもさまざまなリスクを背負っています。そのリスクを全て洗い出し、お客さんにとって限りなくリスクがゼロの状態でセールスをするのがリスクリバーサルです。あなたの商品、サービスを購入する場合にどのようなリスクがあるのか、それを考えることから始めていきましょう。
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